後篩骨洞には、基本的に二つの蜂巣形成起点が存在します。一つは中鼻甲介と上鼻甲介の間の間隙、すなわち上鼻道を起点としたものです。本講座ではここから始まる含気発育ルートを「上鼻道ルート」と呼びます。また、他の一つは上鼻甲介と最上鼻甲介の間の間隙、すなわち最上鼻道を起点としたもので、ここから始まる含気発育ルートを「最上鼻道ルート」とします。篩骨に発育したすべての蜂巣の連続性を、CTデータ上で確認し得た130側について調査した結果では、上鼻道ルートはすべてに、また最上鼻道ルートは約40%に認められています。
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図1A 上鼻道ルート1由来の上鼻道蜂巣(*)が中鼻甲介基板垂直部の背面に、
また上鼻道ルート2由来の上鼻甲介蜂巣(**)が上鼻道蜂巣の後方に
発育している例(1,上顎骨前頭突起, 2,中鼻甲介, 3,上鼻甲介, 4,涙骨,
5,紙様板, 6,蝶形骨)
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図1B 上鼻道ルート1由来の上鼻道蜂巣(*)が篩骨眼窩板に沿って発育し、
上鼻道ルート2由来の上鼻甲介蜂巣(**)がその内側に発育している例
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図1C 上鼻道ルート1由来の上鼻道蜂巣(*)が上鼻道ルート2由来の
上鼻甲介蜂巣(**)の上部に発育し、二重天蓋構造を形成している例 |
上鼻道ルートにはさらにその先に二つの分枝があり、それぞれの末端に蜂巣を形成する可能性を有しています。一つは上鼻道から中鼻甲介基板垂直部の背面に沿って含気形成を進めて行くルートで、これを「上鼻道ルート1」とし、ここから発育した蜂巣を「上鼻道蜂巣」とします。上鼻道蜂巣は、とくに開口部と呼べる狭窄部を持たずに上鼻道から連続的に、中鼻甲介基板垂直部の背面あるいは眼窩紙様板に沿って発育します。もう一つは、上鼻道ルート1の後方で含気形成を進めて行くルートで、これを「上鼻道ルート2」とします。そして上鼻道ルート2の末端では、上鼻甲介内部に上鼻甲介蜂巣(concha bullosa)を形成します。上鼻甲介蜂巣は上鼻道蜂巣と異なり、通常小さな開口を有して上鼻道と交通しています。また最上鼻道ルートからは、通常単一の蜂巣が、上鼻道ルートからの蜂巣の後方に付加的に形成されます。ここではこれを「最上鼻道蜂巣」とします。
後篩骨洞にはその他、上鼻道ルートから連続して、中鼻甲介基板を前方に押し出して篩骨中央部領域に蜂巣を形成するもの、中鼻甲介蜂巣を形成するもの、また上顎洞と眼窩との間に蜂巣(Haller’s cell)を形成するものなど、より複雑な構造を示す例もありますが、基本的にはこれら3つのルートに由来する1~3個の蜂巣がさまざまなヴァリエーションを形成していると言ってよいと考えています(文献)。
図1は、上鼻道ルートから上鼻道蜂巣と上鼻甲介蜂巣の2つの蜂巣が形成されている例にみられる、3つの基本的なヴァリエーションを示したものです。また図2は、上鼻道ルート由来の2つの蜂巣の後方に、最上鼻道由来の蜂巣が付加的に形成されている例を示したものです。Onodi
cellは、蝶形骨洞の上方に食い込むように発育し、その外側壁が視神経と接している後篩骨蜂巣を指しますが、これら3つのルートのいずれもが、Onodi
cellを形成する可能性を有しています。
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図2 上鼻道ルート1およびルート2の蜂巣の後方に、最上鼻道ルート由来の
最上鼻道蜂巣(***)が形成されている例 |
以上、後篩骨に発育する蜂巣をまとめますと、それぞれその末端に一つの蜂巣を形成する可能性を有した3つのルートが存在し、蜂巣の発育状態によりさまざまなバリエーションを構成してます。そしてここから導き出される結論は、どのようなバリエーションであるにせよ、中鼻甲介基板水平部、上鼻甲介下半部、また最上鼻甲介が形成されている例では最上鼻甲介の下半部を切除することにより、従来のような蜂巣間を区画している骨壁に対する穿破操作を加えることなく、すべての蜂巣をそれぞれの換気排泄路から開放することが可能になるといった点です。しかも紙様板、天蓋、視神経といった危険部位から最も離れた篩骨内下部に限定した操作だけで、すべての蜂巣が開放されるため、よりリスクの少ない安全な手術であるといえます。
次回は、これらのルートに発育する蜂巣を開放するための実際の手術手技について解説します。 |